The Stranglers ‎– Feline (1982)

The Stranglersの8作目にあたる美しいメロディと幽玄なアレンジの素晴らしい作品。ヒュー・コーンウェルのアコースティック・ギターの美しい音色をフィーチャーした、バンド史上でも最も優美な雰囲気を湛えた作品。アルバムの代表曲は、やはり“ヨーロピアン・フィメール”と、冒頭に置かれた“真夏の夜の夢”ということになるのだろう。ジャン・ジャック・バーネルが歌う“ヨーロピアン・フィメール”は、一見したところでは普通のラヴ・ソングだが、彼が以前発表したソロ・アルバム『ユーロマン・カメス』のコンセプトを知っている人間ならば、この曲の背景にはヨーロッパ共同体についての政治的思想が存在していることに気づくはずだ。また、“真夏の夜の夢”で登場する「夢」というモチーフは、次々作『夢現』のタイトル・ナンバーにおいて、オーストリア原住民アボリジニの思想にインスパイアされた形で、再び言及されることになるが、現実世界に対する徹底的に突き放したクールな視線が、「所詮この世は一抹の夢にすぎない」という思想にまで到達したことを示しているように思える。その他の曲も、全体に「絶望を超えた穏やかな諦念」とでもいうべきムードにあふれており、そのいずれもが独特のロマンティックなサウンドを纏うことによって、じっくりと聴き込むに相応しい佳曲になっている。最終曲“さよならは言わない”の中間のピアノ・ソロなど、いつ聴いてもゾクゾクするほどの美しさである。

1. Midnight Summer Dream
2. It’s A Small World
3. Ships That Pass In The Night
4. The European Female (In Celebration Of)
5. Let’s Tango In Paris
6. Paradise
7. All Roads Lead To Rome
8. Blue Sister
9. Never Say Goodbye